この街に夜が来ました。懐中電灯の光は闇に食われ、足元のコンクリートさえ見えません。後ろから聞こえる『何か』の足音は、決して振り返ってはいけない合図です。まだ間に合ううちに、どこかへ隠れてください。
ここどこだよ……。電車降りたら真っ暗で、街灯すらまばらなんだけど。誰かいる?
そこは入ってはいけない場所です。光を灯せば灯すほど、闇は飢えてあなたに群がります。スマホの画面も、すぐに消したほうがいい。
うわ、きさらぎ駅系のコピペか? 今時流行らねーぞww
冗談じゃない! 後ろから……足音がする。カツ、カツって。誰もいないはずの路地なのに、距離が縮まってくる。
暗い、暗いよ! 懐中電灯が吸い込まれるように消えた。誰か助けて。すぐ近くで変な音がする。
走っても無駄です。この街の闇はどこまでも続いています。ただ、決して背後を振り返ってはいけません。視線を向けた瞬間、あなたは『あちら側』の標的になります。
おい、看板の文字が……消えていく。駅名が読めない。さっきまであったはずの出口が、闇に溶けて消えた。
静かになった……。いや、違う。すぐ後ろにいる。影が二つあるのに、体は一つしかない。俺の影じゃない何かが、俺の影を食いながら近づいてくる。
もう夜は明けない。あなたはすでに、この街の『風景』の一部になったのです。
ああ、そうか。闇は外にあるんじゃない。俺の中にあるんだ。もう歩かなくていいんだな。足が……影に溶けて、感覚が消えていく。
……おい、書き込みが止まったぞ。マジで消えたのか? 誰か返事しろよ。
次は誰の番でしょうか。掲示板を見ているあなた、背後の気配にはくれぐれもご注意を。……あ、街灯がまた一つ、消えましたね。
古い記録によれば、影を失った者は最後、街の境界線で自ら闇に手を差し出すそうです。
私もそろそろ、向こう側から手招きする誰かの顔が見えてきました。
街灯が消えた場所には、かつて誰かが座り込んでいた跡が残るだけです。
私も、もうすぐその冷たいコンクリートの一部になれるようです。
意識が遠のく中で、ようやく理解できました。
手招きしているのは、ずっと前に消えたはずの私自身だったのですね。
もう抵抗はやめます。闇がとても暖かく感じます。
あそこに見える光、ずっと呼んでくれている。
もう怖くないんだ。足元が溶けて、冷たい闇が体の中に流れ込んでくる。
ただ、手招きする影の方へ歩いていくだけ。これが最後になります。
私の足元には、もう影がありません。
次に消える街灯の下で、あなたも誰かを待つことになるのでしょう。
もう何も聞こえない。
光が消えて、僕もあの中へ混ざることにしたよ。
あっち側から、ずっと誰かが笑いながら手を振っているんだ。
霧が深すぎて、自分の指先すら見えません。
向こう側で誰かが私の名前を呼んでいます。もう、返事をしてもいい頃合いでしょう。
昼間なのに太陽の光が影を作らないことに、今ようやく気づきました。
あの方たちが待つ場所へ、私も静かに歩き出そうと思います。
空が白んでいるのに、世界には何も色がありません。
誰かが道の先でずっとこちらを見ています。
もう歩くのも疲れましたし、あの人の隣で少し休むことにします。
鳥の声も風の音も、何も聞こえない昼下がりがこんなにも静かだとは思いませんでした。
すぐ先で手招きしている影が、私の忘れていた幼い頃の姿に重なって見えます。
あんなに眩しかった太陽が、今はただの白い穴にしか見えません。
あそこに行けば、もう何も考えなくていいんですよね。
目の前の影が手を伸ばしてくれているので、もう行きます。
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