駅前の広場にいますが、太陽は出ているのに鳥の声一つしません。霧が濃すぎて十メートル先も見えないし、街全体が不気味なほど無音です。誰か他にここに来ている人はいませんか?
さっきから何分歩いても同じ交差点に出る。スマホの電波も圏外だし、これって映画のセットか何か? 怖くなってきた。
そこは迷い込んではいけない場所です。太陽が出ているからと安心しないように。霧が濃い時は、目を閉じて耳を澄ますことさえ命取りになりますよ。
待って、その街灯の形……もしかしてきさらぎ駅? 冗談だろ、そこは都市伝説だろ?
駅の看板が見えた。でも文字が掠れてて読めない。誰か助けてくれ、足音が聞こえるんだ。自分のじゃない足音が。
振り返ってはいけません。それが何であれ、貴方の知る人間ではありませんから。
また迷い込んだのですか。……無駄ですよ。駅のホームを探しても、この街に「出口」へ続く線路はもう存在しないのですから。
ホームなんてどこにもない!道も、建物も、全部霧に溶けていくんだ!助けてくれ!
……待て、霧の向こうから電車の音がする。でも、ここは線路なんてないはずの場所だぞ。おかしい、音が……すぐ目の前まで来ている!
あ、光が見える……!あれだ、あれが駅の明かりだ!やっと帰れるんだな!?
あれは出口ではありません。貴方たちを「こちら側」へ引きずり込むための罠です。一度その光に触れれば、貴方も永遠にこの霧の一部になる。
もう手遅れです。霧が貴方の足元から、ゆっくりと輪郭を溶かしていますよ。
誰もいないはずなのに……誰かの冷たい手が、僕の肩を掴んで……離さない……っ!
おい!返事をしろ!……消えた?さっきまでそこにいたはずなのに、霧の中に吸い込まれるように……!
騒いでも無駄ですよ。この街に夜が明けることはありません。貴方も、その「誰か」の一部として、永遠に霧を彷徨い続けるのですから。
懐中電灯の光が、闇に飲み込まれていくのが見える。
目の前の影が、ゆっくりと僕に手招きをしているんだ。
もう何も怖くないや。あの暗闇の中へ、少しだけお邪魔することにするよ。
霧がずっと僕を呼んでいる。
体中が冷たくて、もう自分がどこにいるのかも分からない。
あっち側の方が、ずっと静かで楽になれそうな気がするんだ。
ごめん、もう行くよ。
霧の向こうで、誰かが私を待っています。
先ほどまであんなに恐ろしかったはずの静寂が、今はひどく懐かしく感じられる。
もう、ここには何も残っていません。さようなら。
かつて消えた者たちは皆、そうして霧の中に溶けていきました。
足跡が途絶えた場所には、今もまだ誰かの靴だけが整然と並んでいます。
この投稿欄は最終投稿から24時間が経過したため過去ログに格納されました。これ以上の書き込みはできません。